藤原純友の乱と日振島の財宝伝説 blog

天慶年代 東の平将門の乱とほぼ同時期 時の律令国家に反逆し瀬戸内海・豊後水道で乱を起こした藤原純友の歴史とその財宝伝説を研究しています。最近、藤原純友の根拠地といわれた愛媛県宇和島市沖合いに浮かぶ日振島で新たにいろいろなことがわかってきました。純友の歴史研究をたどりながら、純友の財宝伝説に迫っていきます。

藤原純友ってどんな人?

さて、藤原純友ってどんな人だったんでしょう? これまで、日振島が平安時代の承平・天慶(じょうへい・てんぎょう)年代の頃、藤原純友と海賊の根拠地だったといわれていることは、いろいろな本の片隅に一行くらい書かれているだけで、それ以外には、ほとんど触れられていなかったのです。そこで何をしていたの? 海賊の首領だったんだから日振島を根拠地として周辺で海賊行為をしていたんじゃないか? 単にそういう解釈でしか一般にはとらえられていない。

しかし、歴史学会などの書籍や資料などを見ていくと藤原純友は全瀬戸内海に影響力を持ち つまり瀬戸内海の海賊を指揮できる立場にあったようです。

何かちょっと変ですね。 日振島は宇和海に浮かぶ孤島で、豊後水道にあるんです。なのに歴史上は 全瀬戸内海の海賊の首領

場所がちがうじゃないか?

この辺も藤原純友の仕事や、何のために朝廷から命令を受けてわざわざ僻遠の伊予国(現愛媛県)の南予地域の日振島にきたのか?

このへんのところは、藤原純友の出自 つまり 出生や家系を追って行くと徐々に推測できるようになるのです。

そうして、豊後水道や瀬戸内海で 何か? が起こっていたから それを解決するために朝廷から純友が選ばれたということです。

歴史資料を調べると 藤原純友は 前の伊予の掾(じょう)という官の職を持っていました。公務員だったんですね。そのしごとは今で言えば副知事クラスの立場で、主に警察や検察・裁判官 などの業務が主だったようです。

つまり、朝廷から瀬戸内海や豊後水道で 何かが起こっていたのでその解決のために 純友が 伊予国愛媛県)に派遣されてきたわけです。

さて、純友が前の立場だった 掾 という官職もだれでもなれるわけではありません。平安時代などは、天皇の近親として、また側近として藤原氏が政権を世襲でずっと握っていましたから、藤原氏一族の中から官職に就くものが多く純友もその中の一人だったのでしょう。 つまり藤原純友も 長らく日本の政権を支配していた藤原氏 特に 藤原北家の一族の血筋を受けている一人であり、家系はその傍流からきているのです。

しかし、いくら血筋のよい家柄の子息であったとしても、藤原一族も代を重ねてくると、どんどんどんどん子息が生まれて 一族の一員が多くなります。何せ古代は一組の婚姻で5人も6人も 場合によっては十何人もというように、何人もの子どもが生まれていることが多いので、一族の人数は3代もすると京中にあふれかえってくる。

そんな中で いわゆる 貴族 という特権階級に入れる者も自然と選ばれてくるようになるのです。その基本はほとんどが 世襲。 生まれた時からすでに特権階級に入れる人はほぼ決まっているんですね。 一方親が有力な立場にあったとしても、早く死んだりすると、その子息はよっぽど有力な支援者が近親者にいないとこれもまた没落していくことになります。

そうした中、純友の父である良範(よしのり)の立場は 従五位の下 という一応貴族ですが、末席の立場をかろうじて守ったという人で、職として 太宰小弐(実務上 大宰府の次官)という経歴をもっていましたが、壮年で亡くなったといわれています。 純友はこの良範の八人の子息の三男にあたります。しかし数多い藤原氏一族の子息の中で、早くに父親を失った純友も日本政権の中枢で権力を握っていた藤原北家の傍流ではありますが、特権階級の貴族からは遠い立場におかれていたようです。

当時 藤原氏一族の中でも、貴族になれるのはほんの一握りの者だけであり、特権階級自体も人が増えすぎると、一人一人の取り分が減りますからどんどんリストラが進んでおり、昇進の競争からはずれた、はずされた、いわゆる没落貴族が数多く出てきており、純友の青年時代もそうした悲哀をいやというほどあじわったことでしょう。

しかし、後に純友は朝廷とは立場を敵対しますが、全瀬戸内海の海賊や海民をまとめあげ、律令国家体制を揺るがすほどの乱を引き起こしていくことになります。こうした民衆からカリスマ的な支持を受ける天性の素質と能力を備えた純友が、伊予国という京から離れた僻遠の地で どう成長していったのでしょうか?

まず、藤原純友の経歴である 前の伊予の掾(じょう) という立場から 瀬戸内海 を考察していきます。

そうして、瀬戸内海で一体 何が起こっていたのか? がこの純友と深く結びついているのです。

続く

 

藤原純友 (人物叢書)

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日振島 藤原純友財宝伝説の行方―知られざる宇和海

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